任天堂 『マリオブラザーズ』の修理

「音が出ないから見て欲しい」というご依頼があったので、『マリオブラザーズ』の基板をお預かりました。「(C) 1983 Nintendo」以降にヤスリ掛けがあるので国内版の基板です。

音は出たのですが、マリオの歩行音がポポポポ・・・と低いです。これは明らかにおかしいので直しましょう。

回路図を見ると「1 WALK」「2 WALK」と書かれているものがあり、順当に考えたら「1 WALK」がマリオの歩行音でしょう。2Hの74LS123から1Jの74LS629→2Jの74LS629を通っています。

1Jと2Jを入れ替えて様子を見てみようと思い取り、ハンダ吸い取り機で取り外すと2Jの74LS629が砕け散りました。

無事に取り外せた1Jの74LS629を2Jへ移植してみます。

マリオの歩行音が聞き慣れたピピピピ・・・という音が鳴ったので、74LS629に問題があると見られます。発色の具合が違うのは基板上でのRGB反転を止め、反転回路で映像を出しているからです。

もう1個の74LS629は砕け散ったので発注します。

ビデオボードのボリュームがあまりにも適当なものが付いています。104 = 100kΩが付いているのも含め、「流石にこれは・・・」と思うので交換します。

手元に『ドンキーコングJr.』の修理時に使ったボリュームがあるので交換して、スポンジとその下の両面テープを捨てました。ちゃんと「TMA1-03-VIDEO」及び任天堂の権利表記が見えた方がいいと思います。

基板上でRGBを反転させると出力が汚いので、反転回路を使って出力することにしました。ついでにちょっと見た目が良くないのでハーネスの手直しをしていきます。

線材の長さを整え、付いていない部分のGNDを配線した上で反転回路を取り付けました。

CL2のジャンパも付けたのでこれで大丈夫でしょう。

やたらとリセットが掛かるので、メインCPUとプログラムROMのICソケットを交換しました。これで暫く様子を見てみます。

74LS629を1Lと2Lの両方に取り付けたところ、マリオの歩行音が『クレイジークライマー』のビルを登る音みたいになりました。回路図を見ると1Jと2Jの出力が1Kで合成されている、74LS629は新品に交換した・・・から推測するに629周辺のフィルムコンデンサに原因があると思われます。

C6の0.0039μとC17の0.022μ、ついでにタンタルコンデンサx2を交換しました。

聴き慣れた足音が出ました。フィルムコンデンサ1つでここまで音が変わるというところに、ディスクリート音源の奥深さがある気がします。

氷(スリップアイス)が出るところまで問題が見当たらなかったのでこれで修理完了とします。ここまで大丈夫ならツララも大丈夫でしょう。

【作業内容】
・74LS629交換(不要だった可能性あり)
・ハーネスにRGB反転回路取付及びCL2ジャンパ
・ボリューム交換
・Z80及びプログラムROMのICソケット交換
・フィルムコンデンサ交換